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Vol.3 2010年 9月 暴力を振るう認知症患者さんの体験を通して…

大阪勉強会サークル 精神看護 臨床心理を学ぶ会
代表 石井穂さん

 

高齢者の精神障害といえば一番に想いたつのは「認知症」ではないでしょうか。精神科以外の病院や施設・在宅にもこういった精神障害は見受けられる機会がおおいでしょう。 私自身が認知症の対応で最も困ったケースは「暴力」がある当事者さんのケアでした。 今回は暴力を振るう認知症患者さんの体験を記載してみたいと思います。

 

80代の男性、認知症状で娘以外の家族も分からない状態。現実検討能力は失われ、その場その場の疎通はとれるものの、長期に会話していると辻褄が合わなくなってきます。 機嫌にムラがあり、不機嫌になったり自分自身が状況を把握できないと周囲に暴力をふるうという行動パターンの問題が生じ、家族対応困難として入院された患者様でした。 セルフケアも乱れており、睡眠時間は不定期で食事も気分次第。排泄も処理ができない。 無論、現実検討能力がありませんので「安全を保つ能力」や「孤独との付き合い(対人関係)」も保てない状況でした。 セルフケアに関しては欠落したものをスタッフが代償するといった形の援助方法をとったのですが、気分のムラにより援助を拒否したり、不機嫌になると暴力が出ることに対しては対策を立てる必要がありました。 そこで記憶という性質をベースに暴力に対する対応を検討したのです。記憶とは脳に蓄積される情報です。 過去、現在、未来という時間を区別し物事の体験を保存しています。 また「一人の個性のある個人である」という保証を与え、現在の自分の行動の指標を与えてくれる性質を持つものです。 記憶が曖昧になるというのは「時間」という感覚が混乱し「自分らしさ」という感覚が保証されなくなります。 そうなると、自分がどのように行動していいのか…行動の基準も判断できないわけです。本人の内的世界においては「危機の連続」が起こっているのです。

 

暴力とはそういった混乱から自分の身を守るためであるものとして仮説をたて「自分らしさ」を保証する観点を中心に…
_燭ケアに入るとき、少し離れた位置で現状の説明をしてからケアにはいる。
機嫌が悪くケアなど拒否された時は1分間だけ席をはずして再度部屋に訪れ、看護行為に協力してもらえるよう説明する。
こちらが理解しがたい言動があったとしても、肯定的態度で接する。否定的な言動は言わない。
2人でケアに入る。(多くても3人まで)
 と…方法論を看護計画に組み込み対応するようにしました。 すると、暴力はなくなることはありませんが、ケアに入れない回数や暴力の頻度が極端に減りました。 また、不機嫌な反応に対しても否定的な態度をとらないことで暴力へ移行することも少なったのです。 この体験を通して、精神機能の特性と個人に与える影響を洞察していく大切さ。 当事者の安心と安全の保証、記憶障害をおこしていても「その人らしさ」を保証することが重要であることが体験できたと想います。

「看護どっと合言葉」より転載

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