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Vol.2 2010年 8月 認知症の看護展開 「自分が自分であること」の機能を中心に…

大阪勉強会サークル 精神看護 臨床心理を学ぶ会
代表 石井穂さん

 

 今回は認知症まつわる看護について話を展開していきたいと思います。
 記憶障害といえば、高齢者の認知症を連想するでしょう。その他にも解離性障害なども記憶の障害になります。解離性障害とは「覚えていては…自分が生きていくのが辛い」という何らかの心的な体験などがあり、一部の記憶を全体の記憶から解離(切り離し)をする現象です。認知症は「脳」が老化し器質の変化による記憶する能力が低下したものです。記憶とは物事を覚えておくという機能ですが臨床心理学的側面から考察すると、どのような作用あるのでしょうか?
 実は、記憶というのは「自分らしさ」という機能を支える上で記憶は重要で、時間を含めた物事の体験などを貯蓄し、自分自身が他の誰とも違う「一人の個性のある個人である」という保証を与えています。即ち、記憶が曖昧になるというのは「時間」という感覚が混乱し、「自分らしさ」という感覚が保証されなくなるということです。また、体験が貯蓄されないために「現在何が起きているのか」という認識が出来なくなるわけです。ですから常に「現実」が把握されずに不安と隣り合わせになっています。
 こういった記憶の障害が強くなると、「自分らしさ」を防衛するために「記憶の欠落した部分」に過去の記憶をはめ込んだり、考え方を変化させて辻褄を合せようとします。また、「現実」が認識されない現象に対して、自己に襲いかかる恐怖・不安を行動レベルでの「暴力」という形で自己を防衛する反応も多々見受けられることがあります。

 

精神の医療現場のみならず、こういった「認知症状」を持った方々は施設や身体を扱う病院でも多いはず。 以前、「認知症」が原因で暴力が止まない状態になり、入院された当事者さんのケアをしたことがあります。 現実が認識できず、時間も断片化され、秒刻みに気分が変化します。不機嫌な反応を見せた時や部屋に行くだけで暴力行為が見受けられることがありました。 (無論、認知症で「自分らしさ」が脅威にさらされているわけですから、本人の内的世界観では「自分防衛するため」の反応なのですけどね。) そこで私自身は上記の記憶の性質を考え、何かケアに入るとき…少し離れた位置(暴力を受けないためと、相手に危害を与えないパーソナルスペースの確保)で声かけをしてからケアしました。 無論、暴力はなくなりませんが、頻度は減少しました。また、機嫌が悪くケアなど拒否された時は1分間だけ、席をはずして再度部屋に訪れ、看護行為に協力してもらえるよう声かけをすると機嫌が直っていることも多々ありました。 こういった記憶の障害は「一場面」「一場面」が連続性で繋がっているのではなく、断片化されていて、その場その場の「個人としての保証」がケアしていくことがポイントのように思えます。 実際援助してみて記憶の障害で「自分らしさ」の機能が低下していても、機能はしっかり働いているものですね。

 

「看護どっと合言葉」より転載

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