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Vol.1 2010年 7月 高齢者における精神障害者の看護を通しての体験

大阪勉強会サークル 精神看護 臨床心理を学ぶ会
代表 石井穂さん

 

精神看護は対人関係のプロセスそのものです。高齢者の精神障害との関わりにおいて看護面接をした時の事例を報告してみたいと思います。
68歳の女性。定年退職後、独居生活となり、ひきこもり的な生活となる。その後、「抑鬱」として知人の紹介で薬物療法を受けた。
しかし、改善せずに徐々に隣の家から「自分のことを非難する話し声が聞こえる。」と訴えはじめる。 近隣との関係において監視や嫌がらせを受けると知人に相談。病院に受診し任意入院の運びとなる。入院後、薬物療法を中心に加療。 一ヶ月程度で幻聴体験は消失する。退院を目指し試験外泊を開始すると外泊・外出の際、幻聴が再燃。病院へ戻ると幻聴が消失するといったパターンが繰り返された。 「入院中、悪口はないのに…外泊すると文句を言われる。病気ではなく嫌がらせを受けている。」と徐々に妄想も固定化。 診察でも「外泊中におこる幻聴体験。そこから広がるファンタジックな世界」を話され退院や生活の問題に全く意識が行かず入院が長期化されていた。

このような症例に対し、私は週2回、40分の看護面接を導入し、妄想への執着の緩和を試みました。面接とは相手にとって特別な意味をもつものです。 相手からすると「特別に個人的に時間を作り、何かの機会を与えてもらえるもの」というイメージが湧き起こります。

 

精神症状の出現の原因は独居生活における「心の孤独」であると仮説をたて、妄想体験ではなく、「ひきこもり的な生活」に視点を当てます。
無論、妄想には本人なりの利益がありますので初めはうまく「ひきこもり的な生活」に視点が当たりません。ですから、妄想的な内容と「ひきこもり的な生活の時代」を対比するような話から入ります。 「どっちがしんどかった?」「ひきこもり的な生活をしていた時と比べどうだった?」などと聴きながら…患者に関心をどんどん寄せて「ひきこもり的な生活」へ視点をスライドしていきます。 そして「ひきこもり的な生活」の心的な苦悩へ話題を焦点化します。無論、辛い体験を再体験するわけですから「昔は辛かったけど、今は傍にいるからね。」と安心を与える声は常に入れます。 その時期に患者が聴いてほしかった話をどんどん聴きます。想いに共感しつつ、ゆとりがあるときは「孤独にならない方法論」など話し合いました。 すると、「隣との関係において監視や嫌がらせを受けていた」という妄想は変化しないのですが、 「一人ぼっちは嫌。今まで住んでいた場所じゃなく…施設の方が安心かもしれない。」と徐々に執着するポイントが変化することに成功したわけです。

この看護面接を通して、特別に時間を取るという手法で看護者の全人格を含めた対人関係をベースにお互いが大切な存在であることを確認しあう重要性を再認識することができました。 また、医療者は症状に着目しがちなのですが、人としての当たり前に生じる「苦痛と苦悩」や「健康的側面」に着目することの重要性が変化に繋がることを体験できたと想います。

 

「看護どっと合言葉」より転載

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