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「摂食嚥下障害領域」 Vol.8 2010年 4月 舌癌術後の嚥下障害患者さん

青山寿昭さん

愛知県立がんセンター病院
青山 寿昭さん

 

看護師16年目、摂食・嚥下障害看護認定看護師をしています。 飲み食いが好きで、摂食・嚥下に興味を持ったのは8年ほど前でした。 平成18年に人の勧めで認定看護師になりました。 勤務先は愛知県がんセンター中央病院で主にがん患者への嚥下障害に関わっています。

 

舌癌の治療は手術療法である場合がほとんどで、腫瘍の病期や部位によって切除範囲が変わります。
舌部分切除(舌の半分以下の切除)の場合は嚥下障害で困ることはあまりありません。
その他の半側切除術(半分切除)・亜全摘術(半分以上切除)・全摘術(全て切除)の場合はほとんど嚥下障害になります。
半側切除術と亜全摘術は舌が一部残りますから将来的に食事ができそうだと思われますが、全摘術を行った場合は食べることができるのか?
と疑問を持たれることも少なくないのではないでしょうか。
当センターでの全摘術の場合は腹直筋などの皮弁を使用して切除された舌の部分に充填され、嚥下改善術として喉頭挙上術も施行されます。
固形物の摂取は難しいのですがミキサー食などの液体であれば摂取可能な場合がほとんどです。

 

舌の手術(半側切除と亜全摘)をした患者さんがその後どのような物を摂取しているのか調べた事があります。
ほとんどの患者さんも退院時にはほとんどがミキサー食を摂取して退院します。
舌の大きな機能を失うわけですから常食を摂取するのは難しいと思っていました。
しかし術後1年以上経過した患者さんを調べると、半側切除の患者さんは約90%以上が常食を摂取していました。
亜全摘の患者さんは常食を摂取している人が50%程度で軟菜など少し工夫が必要な人が約50%でした。
そしてどちらの術式でも経口摂取で全栄養を摂取できており、濃厚流動食での補助栄養は行っていないという結果でした。
口腔内の機能は浮腫が軽減して可動域は増しましたが、欠損に充填した皮弁が運動性を持つわけでも知覚を持つわけでもありませんから大きな機能改善にはつながったと思えません。 残っている機能を器用に使って摂取できるようになったと考えられ、意外な結果に驚いたことを覚えています。

 

では舌全摘の場合はどうでしょうか?舌全摘をすると食べる事ができるのかという疑問があると思いますが、上述のとおり液体を中心に摂取できます。
もう一つの疑問は味ですね?実は舌を全摘しても味を感じる事ができます。それは中咽頭にも舌ほどではありませんが味蕾細胞が存在し、味を感じる事ができるからです。 当然味蕾細胞が少ないため味の感じ方は鈍いようです。
しかし、実際に自分が患者さんに確認したわけではありませんが、食事を摂取しているうちにきちんと感じるようになると聞いた事があります。
味に慣れるのか味蕾が発達するのかは不明です。リハビリを行う上で味はとても重要で、リハビリを進める中で楽しみや目標がないと意欲的にリハビリを行う事ができません。 もしも味覚を感じる事ができなかったらリハビリへの意欲も無くなるのでしょう。
放射線治療を行う患者さんは治療中に時として味覚を感じなくなります。
それが原因で経口摂取をやめてしまう患者さんを多く見かけます。味を感じないと食べることが嫌になり、砂を食べているようだとよく言われます。
そして治療後も食事を濃厚流動食中心にしている患者さんも少なくありません。
そう考えると舌全摘の患者さんは液体ではありますが経口摂取ができ、味も感じることができるとなればリハビリも前向きに取り組めるのではないでしょうか。

 

 

以前、舌全摘の術後患者さんで経口摂取がなかなか進まない患者さんがいました。
嚥下造影検査では誤嚥を認めませんでしたが、経口摂取が進まない患者さんでした。
本人に理由を確認しても明確な返事は得ることができず、明らかな誤嚥がないにも関わらず誤嚥が怖いという返事でした。
誤嚥しないように体位の検討、食形態の検討、嚥下方法の検討を行いましたがなかなか摂取量は増えませんでした。
誤嚥の恐怖心もあったと思いますが、手術によるボディーイメージの変化を受け入れることも難しかったのではないかとではないかと考えます。
胃瘻挿入も検討されましたが本人の希望により経鼻胃管で退院することになり、外来でフォローすることになりました。
癌の患者さんだけに言えることではありませんが、障害を負った患者さんの心のケアが重要だと感じた症例でした。

舌癌術後の患者さんは退院後も自分で嚥下訓練を行うことにより食形態を改善している現状があります。
退院後にも訓練に関わることでよりスムーズに訓練が進むのではないかと考えています。
その他、舌を無くすということは嚥下障害へのサポートだけではなく、顔貌の変化や構音障害もサポートも必要です。
それも含めて関わっていけるようにしていきたいと感じます。

 

「看護どっと合言葉」より転載

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