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「摂食嚥下障害領域」 Vol.4 2009年 11月 口唇と嚥下

青山寿昭さん

愛知県立がんセンター病院
青山 寿昭さん

 

看護師16年目、摂食・嚥下障害看護認定看護師をしています。 飲み食いが好きで、摂食・嚥下に興味を持ったのは8年ほど前でした。 平成18年に人の勧めで認定看護師になりました。 勤務先は愛知県がんセンター中央病院で主にがん患者への嚥下障害に関わっています。

 

唇はなにをするところなのでしょうか?
摂食・嚥下障害看護の認定看護師になるまでは深く考えた事はなく、唇は「キス」するところだと思っていました。
でも他にも働きがありますね、話すときに動きますから言葉をつくるところ。
言葉の中でも代表的なのは「パ」「マ」行で、口唇音と言われています。
会話で「パ」や「マ」を上手く発音できない人は口唇の運動が悪い可能性があります。
嚥下で考えてみると口唇は食事のときに口から食べ物が出てこないようにしています。
実際に口唇をあけて咀嚼してみると口から出てきます。液体が多ければ多い程口から出てきますよね。
しかも飲み込むときにのどへ送りにくいはずです。
口腔内の圧は嚥下運動の中では食塊の移送に影響を及ぼし、咀嚼や食塊の咽頭への送り込みに関係します。
口を開けた状態で水を飲むとむせやすくなります(高齢者には勧めてはいけません)。
実際にやってみるとかなり恐ろしく感じます。
また、飲みこみにくさだけではなく、口唇を開けて生活すると口腔内が乾燥しますよね。
口腔内が乾燥すると嚥下反射が起こりにくくなります。

 

僕達でも実際に口腔内を乾燥させた状態で嚥下をしようとしても嚥下運動が起きにくく感じるはずです。
患者さんでも同じで、口腔内乾燥が原因で嚥下障害といわれる場合もあります。
外見から考えても何もしていない時に口唇を開けていると締まりのない顔になりますよね。
その他、食事中に「ペチャペチャ」「クチャクチャ」と音を立てて咀嚼する人がいますよね。
行儀が悪く、僕はとても気になり不快な気分になります。
ちなみに音を立てて食べる人が嚥下障害になりやすいという報告は聞いたことはありません。
考えると口唇は食事や会話に大きな影響を与えていることがわかります。

 

実際に口唇の運動はどうやって見分けるのでしょう?
口唇を動かす筋肉は顔面神経の支配を受けております。
顔面神経麻痺がある患者さんは口唇の動きが悪い方が多いことになります。
麻痺の有無は動きが悪いかどうかを見るわけですが、左右差を見ることが一般的だと思います。
あたりまえですが、麻痺している側が動かなかったり動きが悪かったりします。
上述の通り構音(発音)でも「パ」行「マ」行が上手く発音できないなどという症状で気づくこともできます。
訓練は構音訓練の他に口唇の横引きや突出などが一般的ですね。
昔、駄菓子屋に売っていた紙風船を膨らますのも口唇を上手に紙風船の口あてないといけないのでいい訓練になります。

 

少し前ですが、口唇の閉鎖不全で嚥下障害になった患者さんがいました。
下歯肉癌の患者さんで下歯肉の腫瘍を切除され、縫い合わせる手術をされていました。
切除部位を縫縮されていましたので、器質的に口唇の閉鎖はできなくなってしまいました。
80歳代という年齢もあり、口腔内の乾燥を助長して嚥下反射の惹起は遅延していました。
口腔ケアを積極的に行うことで口腔内乾燥は軽減し、嚥下反射も改善しました。
口唇・舌の訓練は行いましたが口唇が閉鎖しないことにより食塊の移動が難しく、訓練をしてゼリー数口がやっとの状況でした。
家族が積極的な介護を行い、少しずつゼリーを食べる練習を行いましたがそれ以上の改善は見られませんでした。
結局本人も疲れてしまい、やる気を失い全量経腸栄養での栄養補給になってしまいました。

この症例では器質的な口唇閉鎖不全になり、食塊の移送が困難になったと考えられます。
食塊の移送をサポートすることにより経口摂取は可能かと考えられましたが、口腔内乾燥による嚥下反射の惹起遅延が存在し、
咽頭に直接食事を送ることが困難でした。
に麻痺はありませんでしたが動きは鈍かったことと、口腔ケアにより多少の改善はありましたが80代という年齢的な因子も強く、
経口摂取には至りませんでした。

頭頸部癌術後患者はよく手術により下口唇の麻痺をきたします(写真)。
口角から水分が漏れる患者さんは時々いますが、それが原因で経口摂取が困難だという患者さんはいません。
それは舌や咽頭など他の機能が代償していることもありますが、麻痺していても口唇の閉鎖ができていることも大きいと思われます。
今回は口唇について考えてみましたがいかがでしょうか?
口唇についてあまり考えたことがない人が多いと思います。
僕も嚥下を学習するまでは深く考えたことはありませんでした。
コミュニケーションや食事に大変な影響を及ぼし、日常生活で口唇を使用しないで生活するのは困難だと感じます。
僕の唇はいつも乾燥してカサカサなのでリップクリームでも塗っていたわらないといけないなぁと感じました。

 

 

「看護どっと合言葉」より転載

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