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「摂食嚥下障害領域」 Vol.3 2009年 10月 最後の食事?

青山寿昭さん

愛知県立がんセンター病院
青山 寿昭さん

 

看護師16年目、摂食・嚥下障害看護認定看護師をしています。 飲み食いが好きで、摂食・嚥下に興味を持ったのは8年ほど前でした。 平成18年に人の勧めで認定看護師になりました。 勤務先は愛知県がんセンター中央病院で主にがん患者への嚥下障害に関わっています。

 

皆さんは自分の人生最後の食事って何を食べたいかなんて考えたことありますか?
時々飲み仲間や嫁などと、「もし最後の食事になるのであれば何が食べたい?」という会話をします。
最後となると大好きなものを食べたいわけですが、本当に悩んでしまいますよね。
でも実際はあらかじめ病気になる事も分かりませんし、最後の食事の献立の希望がかなう人なんてそんなにいませんよね。
今回は僕の大好きな食べ物の写真を載せてみました。

癌の治療では確実に嚥下障害になる手術があります。
しかし手術の前日の晩に病院を離れるのはあまり好ましくない風潮で、 ほとんどの人が病院食を食べています。
翌日から嚥下障害になることがわかっているのですから、外出でもして最後に好きなものを食べられるといいのですが…。
口腔内の大きな手術をする患者さんは二度と普通食が食べられなくなる人も存在します。
病院食もそんな人のために術前の特別な食事を準備できればなどと考えますが、人手やコスト面で病院食を特別化するのは難しいのでしょうね。

僕は病棟看護師の役割は非常に大きく、患者のQOLを大きく左右させると思っています。
最後の食事のメニューはさておき、最後の食事は誰が決めるのでしょう?
言い換えると最後に絶食を決めるのは誰でしょうか?
少なくとも看護師はその瞬間に居合わす可能性は高いと思います。
絶食になったとしても食事をしても良い状況にあり、食事をできる能力があることに気づけば変化があるのかもしれません。
また日常生活に一番近いのも看護師だと思います。
患者の食事への欲求にも気づくことができるでしょう、 そうした場合に食事ができるのか判断できることが理想だと思います。

僕の関わったことのある患者さんですが、消化器外科の終末期の患者さんでどうしても食事がしたいと希望されてコンサルトを受けました。
スクリーニングをすると口腔内全体的に動きは鈍かったですが、特に目立った麻痺はありませんでした。
しかし、水飲みテストやフードテストでは明らかな誤嚥を認め、結局経口摂取ができませんでした。
その患者さんは結局何も食べることができずに亡くなりました。
頸部より上に病巣がないことと明らかな麻痺がないことから考えると、全身状態の悪化と長期絶食による機能低下が原因だと予想されました。
突然食事を食べたいと思ったとは考えにくいですし、もっと早く患者さんの「食べたい」と関わることができれば良かったのではないかと思います。
嚥下障害のスクリーニングを行い、機能的に経口摂取が不可能である事を本人が納得できたことは良かったのではないかと考えます。
スクリーニング時にテスト用のゼリーを口にして美味しいと味を感じたときの嬉しそうな表情が印象的でした。

もう一人印象的だった症例は甲状腺癌の再発で両側反回神経麻痺になった方です。
唾液誤嚥レベルでしたが必死に食べようと努力していました。
機能的にはとても食べることができない状態でしたが、 主治医と相談して声門にコラーゲンを注入して経口摂取ができるように予定をしていました。
しかし、呼吸状態の悪化により経口摂取することなく亡くなりました。
最後まで食べたいという気持ちを持ち、希望を持っていただけに残念でした。

この二人の患者さんは「食事をしたい」ことを訴えてくれました。そこで看護師が動き始めたことがきっかけになったと思います。
しかし現状ではすべての人が「食事をしたい」と訴えてくれるわけではありません。
機能があるにも関らず、しかたなく自分の中で納得させて受け入れて絶食状態の患者さんもいるのではないでしょうか?
そんな人達の気持を察して関わることができると素晴らしいと感じております。
僕もこの仕事をして15年が過ぎました、病院で絶食になることに慣れてしまっていました。
摂食・嚥下障害看護認定看護師になり、食事についてたくさん考える時間が増えたことでこのような事を考える時間をもらいました。
最後の食事は医療者・患者間でとてもデリケートな問題じゃないかと感じます。
あくまでも患者さんの目線で最良を考えることができればと思っております。

 

 

「看護どっと合言葉」より転載

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