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「摂食嚥下障害領域」 Vol.2 2009年 9月 年齢と嚥下障害

青山寿昭さん

愛知県立がんセンター病院
青山 寿昭さん

 

看護師16年目、摂食・嚥下障害看護認定看護師をしています。 飲み食いが好きで、摂食・嚥下に興味を持ったのは8年ほど前でした。 平成18年に人の勧めで認定看護師になりました。 勤務先は愛知県がんセンター中央病院で主にがん患者への嚥下障害に関わっています。

 

嚥下障害と年齢が関係深いことはご存知でしょうか?そうなんです、歳をとると食事もしにくくなるのです。
少し昔に日本人の死因の1位は悪性新生物になりました。続いて心疾患・脳血管疾患であるのは有名な話です。
それで4位は?60〜64歳までは不慮の事故ですが、65歳以上になるとそれまでは5位にも入っていない「肺炎」になります。

この「肺炎」、歳をとると風邪を悪化させて「肺炎」になるのではなく、ほとんどが「誤嚥性肺炎」だとも言われています。

実際に年齢と嚥下機能が関係あるのかアンケートを取ったことがあります。
誤嚥の症状を13項目羅列し、該当する症状にすべて印をつけてもらいました。

60歳以上での結果は「口が渇く」が40%弱、「むせやすい」25%前後、「咳が出る」20%強でその他にも症状を自覚する人が多いですね。
60歳代と 70歳代のすべての項目を比較すると70歳代の方がほぼすべての項目で多く症状が多く出ているのが分かります。

そして症状ありの中で、60歳代はほとんどが1項目であるのに対して、70歳代の半数以上が複数の症状があるという結果になった。
このアンケートはあくまでもアンケートをした会場まで来ることができた人たちの結果で、
実際に来ることのできない人たちを合わせるともう少し悪い結果になることが予想されますね。

 

歳を重ねると何故嚥下障害になりやすいのでしょうか?

【筋力が低下して咽頭収縮や喉頭の挙上が不十分になること】

咽頭の収縮力が低いと食物を押し流す力が弱く咽頭に食物が残りやすくなります。
また、喉頭が前上方に挙上しないと食道の入り口の開きが悪くなります。
実際喉頭の大きい男性の方が嚥下障害になりやすいと聞いたこともあります。

【咽頭、喉頭の感覚が低下すること】

咽頭の感覚が鈍いと嚥下反射が起こりにくくなり、特に流入スピードが速い水が飲みにくく感じたりする人が多いようです。
喉頭の感覚が鈍いと誤嚥した場合の咳反射が鈍くなります。
咽頭に痰が貯留してゴロゴロ音をさせながら話をしていて、こちらが咳払いをしたくなるような人を見たことがありませんか?
そういう人は痰が貯留しても不快を感じないようです。不顕性誤嚥の可能性が高く誤嚥性肺炎のリスクも非常に高いと思われます。

【歯牙の喪失】

歯牙がないと食物を咬むのに時間がかかり、咽頭に送り込むのに時間がかかったり、
しっかり咀嚼されていないものを飲んだり、食べ物を飲み込む形「食塊」形成に障害が生じます。

【唾液の減少】

唾液が少ないと食物を飲み込む形にするのに時間がかかったり、
味が薄く感じられたりします。

 

歯や唾液の減少は食塊が口の中に貯留する時間が増え、咀嚼と嚥下のタイミングがずれたり、呼吸と嚥下のタイミングもずれます。
呼吸と嚥下の関係は深く、嚥下をするときは呼吸が止まるものです。
嚥下のタイミングがずれるということは呼吸とのタイミングもずれるということになり、誤嚥しやすくなると思われます。

食べることが大好きな僕は歳をとっても好きなものを食べたいと心底思います。
どうしたら老化による嚥下障害にならずに済むかと考えました。
実は先ほどのアンケートをした方たちに定期的な運動を行っているかも聞きました。
その結果、ほとんどの人が軽度の運動(散歩やゲートボールなど)を行っていました。
それでも症状の有無にはあまり関係がなく、軽度の運動ではあまり効果がないという結果になりました。
嚥下に使用する筋肉は口腔内と頸部の筋肉であるため、その部位を使用する運動が望ましいのでしょうね。
嚥下関連筋郡のストレッチや筋力増強目的とした嚥下運動や、唾液分泌を目的とした唾液腺マッサージなどは有名です。

 

高齢者は安静によって機能低下を起こしやすいものです。
人間の死因1〜3位の疾患は治療による安静期間(禁食期間)が存在する場合が多いのですが、
その期間に嚥下機能が低下して経口摂取困難になる患者さんも存在します。
高齢者が禁食になるということは単に楽しみが減るだけではなく、機能低下も招くということです。
高齢者の場合は機能低下を防ぐために早期のリハビリが重要であり、
患者と過ごす時間が一番長い看護師がそれに気付いて関わっていく必要があると感じております。

なんとなく老化と嚥下機能の低下は関係がありそうだと感じていただいたのではないでしょうか。
軽度の運動は嚥下障害にはあまり関係がなかったと記しましたが、
痰や誤嚥物の喀出には肺機能が大きく関係しますので肺炎にならないためには重要だと思います。
高齢になっても嚥下障害にならないためには口腔・頸部の運動はもちろん食べない時間を短くすることも重要である感じます。
嚥下障害になったものを回復させるのは大変ですので、嚥下障害にならないようにする努力も必要ですね。
医療者だけではなくそうでない人も必要な知識なのかもしれませんね。

 

「看護どっと合言葉」より転載

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