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「摂食嚥下障害領域」 Vol.16 2011年 4月 気管切開が嚥下に及ぼす影響

青山寿昭さん

愛知県立がんセンター病院
青山 寿昭さん

 

看護師16年目、摂食・嚥下障害看護認定看護師をしています。 飲み食いが好きで、摂食・嚥下に興味を持ったのは8年ほど前でした。 平成18年に人の勧めで認定看護師になりました。 勤務先は愛知県がんセンター中央病院で主にがん患者への嚥下障害に関わっています。

 

気管切開の適応は一般的には、上気道の閉塞や重度狭窄、長期人工呼吸器管理が必要な場合、下気道の分泌物除去が困難な場合です。 嚥下障害は直接気管切開の理由には含まれませんが、唾液などの誤嚥物を喀出できない場合は下気道の分泌物除去困難であり、そのような場合は気管切開が必要とされます。 しかし、気管切開は嚥下運動を悪化させる要因の一つでもあり、その原因は下記の通りです。

・声門下圧の低下

嚥下時は声門が閉鎖して声門下圧(声門よりも下の気道の圧)が陽圧になります。気管切開は声門よりも下で行われるため、気管切開をすると気管口から圧が抜け、 声門加圧が低下します。声門加圧は陽圧の場合、嚥下後に食残渣を誤嚥しにくくなりますが、それが低下すると嚥下後に咽頭の食残渣を誤嚥しやすくなります。

・喉頭挙上を阻害

気管切開されている場合、気管カニューレを挿入されます。気管カニューレを挿入することで喉頭を固定されて可動域が狭くなり、喉頭挙上を阻害されます。 喉頭挙上は嚥下時に喉頭閉鎖や食道入口部を広くするなどの意味があり、喉頭閉鎖不全による誤嚥や食道入口部開大不全による誤嚥をしやすくなります。

・不顕性誤嚥の原因

気管カニューレを長期間挿入することで気管内の感覚が低下し、咳嗽反射が鈍くなる場合があります。咳嗽反射が十分でないと誤嚥物が貯留して肺炎になりやすくなります。

・カフによる食道の圧迫

カフ付気管カニューレを使用した場合、カフのバルンが食道を圧迫して食塊の食道通過を妨げる場合があると言われています。

 

あくまでも僕の感覚ですが、実際には入院患者さんでも気管切開をしたからといって嚥下障害になることは少なく、 嚥下機能に影響を与える手術や脳血管疾患など他の要因が混在した場合に嚥下障害になることが多いように感じます。 特に声門閉鎖不全や喉頭挙上不全、早期咽頭流入などで喉頭侵入した場合、気管切開による声門加圧の低下が原因の誤嚥が多い印象があります。 嚥下障害の複数の要因が混在し、気管口を閉鎖すると悪い要因が減少して嚥下機能も改善するように感じます。 ですので、必要がなければ気管口は閉鎖することが望ましく思います。

気管口閉鎖の条件は

1.カフを必要としない。
  1. ・人工呼吸の必要がない。
  2. ・咳嗽反射がしっかりしている。
  3. ・誤嚥が少量。
2.気管切開を必要としない。
  1. ・上気道の狭窄がない。
  2. ・下気道の分泌物を喀出できる。
3.自力で排痰できる。
  1. ・口腔や咽頭まで喀出し、嚥下できる。
  2. ・口腔や体外へ喀出できる。

などがあげられ、当センターでの気管口閉鎖は、カフ上の分泌物が減少したらカフ付内管側孔ありからカフなし内管側孔ありのカニューレに交換します。 そして、上気道の狭窄がなければ一方弁付きのキャップ(ワンウェイバルブ)を装着して様子を見ます。ワンウェイバルブの装着で下気道の圧が有効になり、 嚥下機能が改善する場合もあります。呼吸困難がないことや分泌物の喀出を確認し、一方弁を閉鎖して数日過ごせた後に気管カニューレを抜去しています。

気管切開患者は嚥下機能だけではなく、他にもさまざまな影響を受けています。

  1. ・空気が鼻を通らないため、臭いをかげない、鼻がかめない、味気ない。
  2. ・空気が口を通らないため、啜れない、吹けない。
  3. ・空気が喉頭を通らないため、声を出せない、便秘になりやすい、上半身の力が入りにくい、咳が難しい。

日常生活でも注意が必要で、水泳・入浴・シャワー・埃・パウダー・煙・散髪・乾燥・動物・低温・強風などに気をつけねばなりません。 嚥下障害以外にさまざまな生活のしづらさがあり、そのことを十分理解した上で患者さんと関わっていく必要があると思います。

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「看護どっと合言葉」より転載

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