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「摂食嚥下障害領域」 Vol.14 2011年 2月 誤嚥防止術を受けた患者さん

青山寿昭さん

愛知県立がんセンター病院
青山 寿昭さん

 

看護師16年目、摂食・嚥下障害看護認定看護師をしています。 飲み食いが好きで、摂食・嚥下に興味を持ったのは8年ほど前でした。 平成18年に人の勧めで認定看護師になりました。 勤務先は愛知県がんセンター中央病院で主にがん患者への嚥下障害に関わっています。

 

昨年、数年前に舌亜全摘術を受けた患者さんが誤嚥性肺炎で入院しました。
痰の喀出が困難であったため気管切開を施行し、抗生剤を使用して肺炎は改善されました。
その後、退院に向けて嚥下訓練のコンサルトを受け、関わるようになりました。
以前から嚥下障害があったようで経口摂取量が少なく、入院時のALB値は1.5g/dlでした。
嚥下造影検査(Videofluorography:VF)の結果は咽喉頭の動きが悪く不顕性誤嚥を認めました。
口腔機能も悪く、口腔内残留と咽頭への送り込みに障害がありました。
嚥下障害の原因は舌亜全摘による影響もありますが、咽喉頭の動きが悪いことが主な原因であり、低栄養と機能低下が原因だと判断しました。
そこで、栄養状態の改善とストレッチを中心の間接訓練を開始し、栄養状態と嚥下機能は少しずつ改善がみられました。
VFの結果と気管切開による誤嚥物の確認と吸引は行えるため、不顕性誤嚥ではありましたがゼリーでの直接訓練を開始しました。
開始当初は経口摂取に活気が出ましたが、次第に誤嚥性肺炎の恐怖を訴えるようになりました。
それと同時に経口摂取量の増加は認めず、逆に誤嚥が増えている印象すら感じ、以後の方針を主治医と共に検討しました。
この時点で主治医と検討したことは

  1. ①このまま継続して訓練を行う。
  2. ②嚥下機能改善術を行う。
  3. ③誤嚥防止術を行う。

結果的には③ の誤嚥防止術を行いましたが、その理由は以下の通りです。

  1. 口腔機能が悪く言葉でのコミュニケーションを主としていない。(筆談)
  2. 不顕性誤嚥で繰り返す可能性が高い。
  3. 経過と障害状況から栄養摂取を全量経口で行えたとしても時間がかかり、栄養法を併用していく可能性が高い。
  4. 唾液の処理も難しく、現状でも気道のクリアランスが悪い。
  5. 嚥下機能改善術を行っても栄養摂取を全量経口摂取で行える可能性が低い。
  6. 本人が希望している

 

誤嚥防止術とは誤嚥を防ぐ術式で声門閉鎖術・喉頭全摘術・気管食道分離術などがあります。
どの術式も声帯の機能を使用できなくなり、誤嚥を防止するために失声という大きな代償を支払うことになります。
そして勘違いされがちですが、気管に入らないようにする手術で嚥下機能自体は改善されません。
ですから、誤嚥防止術を行っても嚥下機能が改善するわけではないので嚥下訓練が必要な場合もあります。
したがって、手術を行う前には十分に嚥下機能の評価を行い、嚥下機能を把握したうえで検討せねばなりません。
この患者さんは口腔機能低下による咽頭への送り込みが悪いことと、咽頭収縮が弱いために咽頭残留が問題であり、 誤嚥防止術を行っても術後に嚥下訓練が必要だと予測されました。
全ての情報提示をした結果、この患者さんは誤嚥性肺炎の可能性が一番低くなる方法を希望されました。

予想通り術後には嚥下訓練が必要でしたが、誤嚥性肺炎のリスクが軽減したことが良かったのか、積極的に経口摂取の訓練を行うようになりました。
その後、必要栄養量の8割程度のカロリーを経口摂取し、残りを経鼻経管栄養で栄養摂取でき、中心静脈栄養を必要としない状態で退院しました。
この患者さんは結果的に嚥下訓練の継続を必要としましたが、誤嚥防止術を行ったことで誤嚥性肺炎の恐怖から解放され、精神的にも前向きに訓練を行うことができました。
そして、経口摂取を開始してからは無関心だった食形態にも興味を持ち、食べたい物を訴え、食への欲もでてきました。
このように、患者さんのニーズに合えばより良い QOLとなりますが、誤嚥防止術は失声という大きな代償があるため、慎重に検討をしていく必要があると感じます。

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「看護どっと合言葉」より転載

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