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「摂食嚥下障害領域」 Vol.13 2010年 12月 栄養・嚥下外来

青山寿昭さん

愛知県立がんセンター病院
青山 寿昭さん

 

看護師16年目、摂食・嚥下障害看護認定看護師をしています。 飲み食いが好きで、摂食・嚥下に興味を持ったのは8年ほど前でした。 平成18年に人の勧めで認定看護師になりました。 勤務先は愛知県がんセンター中央病院で主にがん患者への嚥下障害に関わっています。

 

在院日数の短縮により入院中にセルフケアの修得やリハビリテーションの実施は十分とは言えません。
そして少子・高齢社会の現在、家族の支援を受けられない患者さんも少なくありません。
このような理由によって外来看護が果たす役割そのものに変化が求められ、従来の診察介助から、生活の視点を重視した患者教育が不可欠になってきました。
看護外来を開設する施設も増え、当センターでも今年の6月から栄養・嚥下外来の運営を始めました。今回は実際の関わりを少し紹介したいと思います。

 

60歳代 男性 身長:160cm 体重:48kg
家族構成:本人・妻の2人暮らし
病名:多発性脳転移(小脳・脳幹)
既往歴:30歳代 メニエール病
嗜好:喫煙:20本(20〜52歳) 飲酒:焼酎1杯/日

*多発性脳転移のために全脳照射と肺門部に放射線療法を施行後腫瘍は縮小し、その後の精査でも腫瘍の増大は認めていませんでした。

 

初期評価では「水分はむせる」「食事もむせて飲みにくい」とう主訴があり、右顔面神経麻痺と右舌咽・迷走神経麻痺を認めました。
検査値に異常はなく、食事は妻が作成した軟菜レベルの物を摂取していました。
顔面神経・舌咽神経・迷走神経麻痺があること、そしてその症状と嚥下障害の原因を説明し、訓練を検討しました。
間接訓練は声門閉鎖訓練を行い、経口摂取時の代償法として息こらえ嚥下と頸部回旋嚥下を行うように指導しました。
口唇閉鎖は保たれていましたが、食形態の改善(咀嚼機能改善)のために口唇の自動運動を指導しました。

食事は妻の作成した軟菜食を8割摂取できていたので続けていくようにし、喉頭麻痺により水分が不足傾向になるため、とろみの水分やゼリーを作り置きにするなどの工夫を促しました。 以後、1回/月で5ヶ月外来通院し、顔面神経麻痺の改善とともに構音も良くなりましたが、声門閉鎖訓練による最長持続発声時間の改善はみられませんでした。
特別な代償法を行わなくても食事は何でも摂取できるようになり、体重は48圓ら52圓冒加しました。
喉頭麻痺の患者さんは水分が苦手な場合が多いため、意識的に水分を摂取するように指導して外来を終了しました。

 

この事例は全脳照射後に腫瘍の縮小を認め、1年経過後も腫瘍増大がなく他の転移も認めないことから、機能改善を目標と判断しました。
嚥下障害患者は口腔・咽頭機能が低下しているために無理な訓練は誤嚥や窒息を招きます。
在宅の摂食・嚥下障害患者に対して、食形態の問題は大きく、男性患者では調理することができなかったり、女性患者では家族の食事をも作る役割があったり、家族の支援状況を確認する視点が必要です。
今回の事例では妻の積極的な協力があり、食べやすい食形態を自宅で摂取することができ、栄養状態も低下する事が無く嚥下訓練をすることができたと思います。

そして、本人と妻が適切な食形態を把握する事で誤嚥性肺炎や窒息などを起こす事無く経過する事ができたと思います。
どうしても訓練に目が行きがちですが、在宅での嚥下訓練を行う上で窒息や誤嚥性肺炎に対するリスクを十分説明し、 患者が主観的に判断して独りよがりに自宅で訓練を進めることのないように指導することも重要だと思います。この事例のようにがん治療後に時間をかけて機能改善を期待できる場合もあります。
退院してしまうとリハビリを行う機会が減少します。しかし、専門的なリハビリ指導を行える窓口があればより有効な機能改善を期待できると思います。
在宅で有効なリハビリを行うことはがん治療のQOLが向上すると思いますし、そのような関わりができればと思っております。

また、栄養・嚥下外来を利用する患者さんは手術療法や放射線療法を受けた場合が多く、ほとんどの患者さんが治療による後遺症や予後への不安を抱いています。 摂食・嚥下障害を受け入れることができないままの退院や、その障害の回復見込みなどを知らされないままに退院する患者もいます。
それに加えて、がんの再発や予後への不安が重なり、自宅で前向きなリハビリができない患者さんももいます。
実際、嚥下指導を行うよりも患者さんの話を傾聴することや、必要な情報提供を行う機会もあり、精神的なサポートの場としても活動できればと思います。

画像
こちらの転移性脳腫瘍の写真はイメージであり、本人のものではありません。

 

「看護どっと合言葉」より転載

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