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「摂食嚥下障害領域」 Vol.11 2010年 9月 むせない誤嚥

青山寿昭さん

愛知県立がんセンター病院
青山 寿昭さん

 

看護師16年目、摂食・嚥下障害看護認定看護師をしています。 飲み食いが好きで、摂食・嚥下に興味を持ったのは8年ほど前でした。 平成18年に人の勧めで認定看護師になりました。 勤務先は愛知県がんセンター中央病院で主にがん患者への嚥下障害に関わっています。

 

 経口摂取を開始した患者さんがむせることなく食事を摂取したが、その後に肺炎になったという経験はないでしょうか。
 このような患者さんは誤嚥をしてもむせないために表面上は上手に摂取できているように見えます。しかし実際は誤嚥をしており、むせないために喀出できずに肺炎になるという患者さんです。発熱や痰の増加などの症状が出るまで気づかないことが多く、肺炎が重症化することもあります。このようなむせない誤嚥を「不顕性誤嚥」(silent aspiration)といいます。 誤嚥といえば一般的に「むせる」ことで判断する場合が多いと思いますし、実際に誤嚥の症状に「むせる」とあります。しかし、むせない誤嚥がある事を知らない人も多く、看護師も例外ではありません。誤嚥をしたときにむせるのは気管に入った物を喀出するための反射です。しかし、むせないと貯留されて肺炎になります。そして、誤嚥していることにさえ気づかない可能性があり、肺炎のリスクも高くなります。
 不顕性誤嚥の原因はいろいろ考える事ができます。喉頭の感覚は主に迷走神経系の支配ですので、迷走神経系の麻痺でもおこります。その他、加齢・放射線療法・気管切開・呼吸器疾患・低栄養・向精神薬内服・気道クリアランス不良などが原因となる事もあります。
 遅延性のむせや嗄声は不顕性誤嚥を疑う症状です。その他、常にのどで痰がゴロゴロしている人は咽頭・喉頭の感覚が鈍い証拠で、不顕性誤嚥の可能性が高くなります。嚥下内視鏡検査(VE:videoendoscpic evaluation)や嚥下造影検査(VF:videofluorograhpy)などは嚥下障害を診断することができますし、不顕性誤嚥も把握することが可能です。
 また、水飲みテストや反復唾液のみテストなどのスクリーニングテストは単独で行うよりも咳テスト(表1)など組み合わせることで、不顕性誤嚥を配慮したより感度の良いスクリーニングを行うことができます。スクリーニングテストは簡便に行えますが、不顕性誤嚥を確実に判断するのは難しく、食事を開始した患者さんへは必ず不顕性誤嚥の可能性を念頭に関わる必要があります。

表1
目的
・気道の防御反応を反映。
・不顕性誤嚥のスクリーニング法。
方法
・1%濃度のクエン酸生理食塩水溶液を使用。
・ネブライザーより噴霧し,鼻栓をした患者に口から呼吸をさせる。
・吸入時間は1分間,咳が5回の出現にて咳ありと判定。
*注意:喘息の既往のある患者には行わない!

 

 不顕性誤嚥のある患者さんに有効と思われる手段を考えてみましょう。
 誤嚥しないように介助や訓練を行うことが前提ですが、不顕性誤嚥していた場合を考えて意識的な咳を行い、湿性嗄性の有無や頸部聴診(表3)で残留物の有無を確認する。 咽頭感覚が悪い事が予想されるため、嚥下後に食物が咽頭に残留していることに気づかず、嚥下後に誤嚥することを防止するための複数回嚥下(表2)などが考えられます。 そして嚥下障害患者は咳を有効的に行えないことも多く、不顕性誤嚥ではなくても喀出のために有効な咳ができるよう練習することはリスク回避として重要と思われます。  不顕性誤嚥は症状が分かりにくく、患者さんに自覚がないことも少なくありません。食事中のむせでだけでの誤嚥の判断は危険であり、日常の排痰状況や痰の性状、熱型には十分注意して経口摂取を進めていく必要があります。
 僕も不顕性誤嚥には何度も泣かされていますので気を付けていきたいと思います。

表2
複数回嚥下
・一口につき複数回嚥下することで咽頭残留を除去し、嚥下後の誤嚥を予防する。
・嚥下後にもう一度嚥下を行う(「もう一度飲んでください」など)
・咽頭残留感がなくても行う。(不顕性誤嚥の場合、本人は自覚がない)
表3
頸部聴診法
・聴診器は体格に合わせる(小型の物の方が評価しやすい)。
・聴診器は輪状軟骨直下気管外側上の皮膚面に当てる。
・左右の頸部の評価を行い、食形態や量を変えて評価。
*異常時は嚥下前の流入音・嚥下時の泡立音・嚥下後の湿性音・振動音が聴取される。

 

 

「看護どっと合言葉」より転載

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